zarazara

2025.01.17

痛みって何(part1)

皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

お正月は、楽しめましたか?

私は、こたつでミカン・・・食べたいなと思いながら、クリーニングに預けているこたつ布団を取りに行きませんでした。

 

さて、今回のテーマは痛みについてです。生活場面で、痛みがきっかけで行動を先延ばしにしたり、出来なくなったりすることは非常に多いと思います。「痛みさえなければ・・・」と考えてしまうことは人類共通の悩みなのではないでしょうか。では、「痛み」とは何なのか、なぜ在るのでしょうか?深く考えると「痛みは生きる力だ」とか「痛みなくして成長なし」とかニーチェの哲学話にもなってしまうので、それはまたの機会にしようと思います。

 

この記事の内容

1. 痛みとは?

2. 痛みのメカニズム

3. 痛みの脳科学

4. 破局的思考と恐怖回避行動

5. 慢性疼痛の治療法

6. まとめ

 

1. 痛みとは?

痛みは、身体が危険な状況にあることを知らせるための警告信号です。私たち人類を含めて数百万年以上生存している生物には、「痛み」あるいは、それに似た感覚システムが存在しているとされております。通常、体が損傷を受けると、侵害受容器(傷や炎症を感じとるセンサー)が刺激され、その信号が神経を通じて脳に伝わります。脳がその信号を解釈し、「痛み」として認識します。痛みの感覚は、身体の保護と治癒を促す重要な役割を果たしています。

ここで、痛みの定義を紹介します。

国際疼痛学会では、2020年にこのように定義しました。痛みの定義は、科学的にいろいろ証明されるたびに書き換えられており、これが最新です。実際には、この文章の前後に色々説明されており、意訳すると「原因があろうがなかろうが、見つからなかろうが、本人が言葉で訴え、あるい は言葉を発さなくとも、痛みを避けたり、それに似た行動をとったりすれば、それは痛みである。」ということになっています。もちろん科学的根拠があり、WHOは2018年に説明困難な慢性疼痛を「慢性一次性疼痛」と分類しました。

説明困難な痛みとは、何なのか?どうすれば良いのでしょうか?

2. 痛みのメカニズム

まず、代表的な痛みのメカニズムについて説明します。

痛みは大きく分けて、二つのタイプに分類できます。

  • 侵害受容性疼痛: 組織の損傷や炎症により発生する痛みです。たとえば、切り傷や捻挫がこれに該当します。
  • 神経障害性疼痛: 神経自体が損傷を受けたり、異常をきたしたりした結果発生する痛みです。糖尿病による神経障害や、脊髄損傷後の痛みが例として挙げられます。

これらは、説明可能な痛みです。この二つに加えて、「痛覚変調性疼痛」というメカニズムがあります。これは、2017年に国際疼痛学会が提唱したものであり、脳科学の発展により説明された第三のメカニズムとなります。これにより、心因性疼痛(いわゆる心の問題、思い込みの痛み)というものを一部否定することになります。

l  痛覚変調性疼痛:明確な器質的原因がないにも関わらず生じる痛みです。侵害受容性疼痛と組み合わせて生じることもあります。

3. 痛みの脳科学

怪我や捻挫が治っている と言われても、痛みが続く場合がありますよね。

特殊なMRIで脳の活動を調べられるようになったのが1991年。それから、世界中の脳科学者が痛みの謎を解明しようとしました。

そこで分かったのは、痛み刺激を受けた時に感覚神経だけでなく、情動に関係する部位が多く働いたということです。

そして、もう一つ重要なことがあり、「脳には可塑性(かそせい)がある」ということです。脳の可塑性とは、平たく言うと「失われた機能の代償」であり、脳卒中などで麻痺した手足を使えば使うほど、脳内に新しいネットワークが構築されていくというものです。当院のリハビリで中心となっている脳卒中後遺症のリハビリでは、脳の可塑性を賦活できるように運動中心の内容となっています。

話が逸れましたが、痛みの話に戻します。脳には可塑性があるため、痛みによって生じたネガティブな情動が強くなりすぎると、情動と痛みを結びつけるネットワークがどんどん活性化していき、いわば脳が痛みを作り出す状況となります。

これが痛覚変調性疼痛の大まかなメカニズムです。


ここから少し複雑な話に入ってきますので ちょっと休憩で今回はここまで!

次回さらに深く掘り下げます!