2026.07.28
~手を握る・操作するリハビリ道具の一つ「お手玉」の一側面~
「リハビリでお手玉を使うんですか?」
患者さんやご家族から、このような質問をいただくことがあります。
お手玉と聞くと、昔ながらの遊び道具というイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし、私たち作業療法士にとって、お手玉は「ただの遊び道具」ではありません。
実は、手の動きや感覚を引き出すための優れたリハビリツールの一つなのです。
「握る」という動作は、とても奥が深く、普段私たちはコップを持つ、箸を使う、洋服のボタンを留めるなど、何気なく手を使っています。
しかし、これらの動作は「ただ握る」だけではありません。
物の大きさや重さ、硬さを感じ取りながら、指を開き、手を伸ばし、ちょうどよい力で握る。そして、必要なタイミングで力を抜いて離す。
この一連の流れを脳が瞬時にコントロールしています。手を動かすということは、脳と身体が密接に連携して初めて実現できる、とても高度な活動になります。
脳卒中などによって脳が障害されると、この連携が難しくなり、
「握ろうとしても力が入りすぎる」
「物をつかんでも落としてしまう」
「手を伸ばしたつもりでも届かない」
といった困りごとが生じます。
なぜ「お手玉」が良いのでしょうか?
お手玉には、リハビリに適した特徴があります。柔らかく手の形に合わせて変形し、適度な重さがあり、握ると手のひら全体に心地よい圧が加わります。
この圧が、脳へ「今、しっかり触れています」という感覚を伝え、手の動きを引き出すきっかけになります。さらに、お手玉は転がりにくく、急な動きをしないため、安心して繰り返し練習できます。
患者さんの状態に合わせて
・握る
・移動させる
・集める
・投げる
など、様々な課題へ発展させられることも魅力の一つです。
身近な道具ですが、使い方次第で多くの治療的価値を持っています。
例えば、お手玉をしっかり握れるようになることは、
・コップを安定して持つ
・買い物袋を持つ
・タオルを絞る
・食器を洗う
・孫の手を握る
そんな日常生活につながっていきます。
リハビリ室でできることが増えるだけでは、本当の意味での回復とは言えません。
「家で使える手になること」
「自分らしい生活に戻ること」
それが私たちの目標です。
身近な物だからこそ、生活へつながる
リハビリで使用する道具は、高価な機器だけではありません。
今回ご紹介したお手玉や棒のように、昔から身近にある物にも、多くの可能性があります。重要なのは「どんな道具を使うか」ではなく、「その道具をどのような目的で、どのように使うか」です。
私たち作業療法士は、一つひとつの活動に意味を持たせながら、その方にとって最も効果的なリハビリを考えています。
「この手でもう一度料理がしたい」
「もう一度仕事に戻りたい」
「趣味を再開したい」
そんな一人ひとりの想いに寄り添い、その実現に向けて伴走することが、私たちの役割です。
最後にリハビリは、筋力を鍛えるだけではありません。
感覚を育て、脳に新しい学習を促し、「できる」を少しずつ積み重ねていく時間です。
お手玉という身近な道具にも、その人らしい生活を取り戻すための大きな可能性があります。「動かす」と「その動きを生活でどう活かすか」を大切にしています。脳・神経科学に基づき、一人ひとりの状態を分析し、「動く可能性」を最大限に引き出すことを目指しています。
ミロク脳神経リハビリクリニックでは、科学的根拠に基づいたニューロリハビリテーションと、一人ひとりの「こうなりたい」という想いを大切にしながら、「脳卒中を、あきらめない。」という理念のもと、患者さんとともに新しい未来をつくっていきます。