2023.02.20
少し不便を感じるということ
「病院では歩いたり、トイレが上手にできたのに退院したら勝手が違うくてできない」
「何のために回復期で半年も頑張ったんだろう」
「長く住み慣れた自宅のはずなのに、別の世界のアスレチックに来たように感じる」
これは実際の外来で患者さんから耳にした言葉です。
脳卒中リハビリ診療に携わっていると、必ず聞く言葉の1つと思いますし、
晴れやかな表情で退院していった患者さんから落胆の表情でこれを聞くたびに私自身も申し訳なく悲しい気持ちになっていました。
またご家族の立場からは
「家の中で勝手に歩かれて転ぶと怖いからあまり歩かせないようにしている」
「外は危ないから基本的に家にいてもらうようにしている」
いわゆる介護の過保護(過介護)の問題もあります。
もちろんこれらのことは、1つの組織や、ましてはクリニックレベルで何かできるわけではなく
地域社会をあげての問題とすべきことと思っています。
まさに「地域社会の中で新しい未来をつくる」 という私たちの理念はここにあります。
病院は当然その役割や存在として安心できる環境でなければなりません。
24時間看護師やセラピストが常駐しており、何かあればすぐに駆け付けてくれる。
ご飯も用意されている。フロアは広く段差のない完全バリアフリー仕様。
これが病院です。
ですが、そんな環境だからこそ出来たことが、必ずしも自宅でできるとは限らないということにもつながります。
どれだけ自宅改修を入念にしても廊下幅を1.8mも取ったり、内寸で2×2mくらいのトイレを設置したりというのは
フルリフォームに近い話であり現実的ではありません。
クリニックも医療機関である以上、バリアフリー、ユニバーサルデザインというのは必須であります。
ただ、私の考えとして、「空間としての居心地の良さ」「天然素材の材質から感じる空気の良さ」「安全性」などをしっかりと担保したうえで、少しでも自宅や外に近い(よく言えば家に似た・悪く言えば少し不便な)環境をあえてつくることも模索しています。
その1つに偉い人たちに反対された「庭」があります。
と言ってもこんなじゃないですよ。。💦
クリニックの中にストレスフリーで移動できる小さいですが散歩したり、木を眺めたり、草むしりしたりできる庭を作ります。 降雪期間以外はどなた様もご自由にな空間です(本当に狭いですが…)
眼の前には広大な公園有するわくわくらんど。
隣には24H営業スーパーとコーヒーチェン店。
少しすすむと足湯も楽しめる天童温泉街。
(自分で書いててすごい立地だと改めて思います)
もちろんこれらの場所は最大限にリハビリにも活かしたいと考えています。
法的に可能であれば私やセラピストも同伴して一緒に外に出ます。
一緒に散歩して一緒に足湯します(これだけで院内だけの動作で評価するより多くの情報が把握できますし私も足がぽかぽかになるので一石二鳥です 笑) 許してくれない大人もいるかもですが、なんとか実現したいですね
クリニック内に庭を作る理由は、もちろん待合室から景色として楽しんでもらえるという意味が大きいです。
天童のランドマークたる場所に森のような景色に囲まれたクリニック。
待ち時間やリハビリの合間に気軽に外を楽しんでもらいたいという思いです。
その景色もリハビリの場に使ってしまおうというのが次の目的です。
もちろん庭には舗装路として整備された道も作りません。基本土なので歩きにくいかもだし雨あがりはぬかるむかもしれません。 そこを歩いてみる。リハビリです。 楽しみながら歩容やバランスなどの評価ができます。
バリアフリーではないからこそ見える評価があります。
それを私たちがしっかりとフィードバックすることで、自宅での生活に活かしてもらいます。
院内外で装具の着脱などが大変そう。。
という声があるかとも思いますので、当院は一部スペースを除いて完全土足です。
掃除が大変だろうけどスタッフ一同で頑張ります
ちょっとした不便を楽しみながらリハビリ評価・治療に繋げて、在宅へ還元する。
そんな場所を作ることが理想のミロクリハへの第一歩かなと思います。