zarazara

2025.05.22

歩行再建を“あきらめない”ための装具療法 part2

3月に公開したブログでは、装具療法とはどういうものか、装具の種類や効果、制度について紹介させて頂きました。

今回は装具療法についてpart2ということで、生活期における下肢装具の役割や現状・課題、当院での実際の取り組みについて紹介していきます。

 

Ⅰ.生活期における下肢装具

ニューロリハビリテーションにおける装具療法は、脳卒中治療ガイドライン2021においても推奨されており、エビデンスの高い治療法です。装具療法は脳卒中などの発症後まもなく、急性期リハビリテーションの段階から適応となります。はじめは病院にある備品装具での練習から開始しますが、その後は個々の回復度合や必要性に応じて、以前のブログでもご紹介したようにオーダーメイドの装具が作製されます。多くの場合は、急性期や回復期において入院中に装具が処方・作製され、生活期ではそのまま継続使用されています。しかし、発症からの期間が長くなるほど、運動麻痺や痙縮(筋肉のつっぱり)などの身体的変化の問題により、装具が身体に合わなくなったり、壊れたりすることがあります。特に生活期においては、装具が壊れたり合わなくなったりしても、それを相談する先が見つからず(分からず)、不適切に使用したまま放置されている方も少なくありません。このような方々は“装具難民”と呼ばれ、生活期における大きな問題となっています。

 

Ⅱ.装具外来について

当院では、生活期においても適切に装具を使用できるよう、週に1回山形市の装具業者に御協力頂き、装具外来を実施しています。当院の医師・理学療法士に加え、装具の専門家である義肢装具士が1つのチームとなり、装具作製の相談から適合確認・修理などメンテナンスまで実施しています。

また最近では、当院の大きな特徴の一つであるフットケア外来とのコラボレーションを行い、靴やインソールなどの購入・作製の相談も頂いております。

義肢装具士と理学療法士による装具外来の様子



Ⅲ.装具手帳について

装具に関する当院の取り組みとして、「装具手帳」の運用も実施しております。当院で下肢装具を作製された方へ、作製した装具の基本情報や使用・メンテナンス方法、日々のチェックリスト、相談先に関する情報まであらゆる内容を記載し交付しています。我々と患者様・御家族様での情報共有はもちろんのこと、患者様に関わる他施設・事業所の方々とも密に連携をとっていくためのツールとして、どんどん地域に広めていきたいと考えております。

装具手帳の内容(一部抜粋)


ニューロリハビリテーションにおいて装具は非常に重要な役割を担いますが、生活期における問題・課題も山積みなのが現状です。地域から少しでも“装具難民”を減らしたい・・・。その思いを少しずつ形にしていけるよう、当院にできることを考え、試行錯誤していきたいと思います。