zarazara

2025.10.27

入院中と退院後のリハビリ、何が違う?―“受けるリハビリ”から“するリハビリ”へー

こんにちは。

今回は、「入院中と退院後のリハビリの違い」について、少し書いてみたいと思います。

唐突ですが、リハビリという言葉を聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか?

ケガをしたり、病気のあとに体力を戻したりするための運動をする…という印象を持っている方も多いかもしれません。

では、「入院中」と「退院後」の違いはあるのでしょうか?また、病気やケガをした方でなければ、どんなリハビリをするのでしょうか?

実は、リハビリの目的や進め方は一人ひとりで少しずつ違ってきます。特に、病院以外のリハビリにおいては、より顕著になる印象です。

【入院中のリハビリ:まずは身体の機能回復をめざして】

入院中のリハビリでは、療法士が中心となって、落ちてしまった身体機能や体力を回復する支援を行います。

イメージしやすいところでは、歩く・立つ・起き上がるといった動作練習を通じて、「退院できる状態」をつくるのが主な目的です。

病院という整った環境で、毎日のようにリハビリが提供されることで、機能を回復しやすいというメリットがあります。

【退院後のリハビリ:暮らしの中で「その人らしさ」を取り戻す】

一方、退院後のリハビリでは、「今の暮らしをどう維持・発展させていくか」が中心になります。

たとえば、

・一人でトイレまで行けるようにしたい

・料理や買い物ができるようになりたい

・地域の集まりに参加したい

といった生活に根ざした目標に向けて、訪問・通所・外来などの方法でリハビリが続いていきます。

【「暮らしの中」で始まるリハビリ】

私は生活期のリハビリに関わるなかで、ふと感じることがあります。

「入院中の療法士は、“退院後の生活がどんなものか”、どれくらい想像できているのだろうか?」

もちろん、病院の中では限られた時間と情報の中で、最大限の支援を行っておられることは十分理解しています。

私たち生活期の療法士も、入院中の制約や大変さをすべて把握しているわけではありません。

特に最近では、入院期間が短くなっており、限られた時間の中で効率よく成果を出すことが求められる時代です。

さらに、初めて病気やケガを経験した方に「どんなことができたら家に帰れると思いますか?」と聞いても、「歩ければ大丈夫かな」といった漠然とした答えになるのも自然なことだと思います。

情報が少ない中で、何が必要かを正確に判断するのは簡単ではありません。


【「リハビリを受ける」から「リハビリをする」へ】

入院中でも、自分のことを自分で考えて積極的にリハビリに取り組んでいる方もたくさんいます。

ただ、突然の病気やケガ、そして不安の中で「とりあえずリハビリしましょう」と言われれば、どうしても受け身になりがちです。

しかし、退院後の生活では「どう使うか」を自分で考えて動くことが求められます。

たとえば、「ふらつくので見守りが必要」と言われた方が、実際に帰宅してみると、「やっぱり少し怖いから支えてほしい」となり、家族の心情としても「つい介助しまう」という場面が出てきます。

そうして、知らないうちに介助が増え、自立の機会が減ってしまうこともあるのです。


【生活期の療法士の役割とは】

こうした状況を踏まえると、生活期の療法士に求められるのは、ご本人の生活に寄り添いながら、課題を見つけ、具体的な目標を一緒に立てていく力です。

そして、入院中に獲得した身体機能を「暮らしの中でどう使うか」を一緒に考え、「やってみよう」という気持ちを引き出すことが重要になります。

その結果、「自分でできること」が増えれば、自然と「次はこれを目指そうかな」という次のステップが見えてくる。

―「受けるリハビリ」から「するリハビリ」へ―

そんな意識の切り替えが、新しい未来への第一歩になるのかもしれません。

【おわりに】

退院後のリハビリは、単なる機能回復ではなく、「自分らしく生きる力」を育てていくプロセスです。

そしてそれを支えるのは、療法士だけでなく、ご家族や地域の皆さんの力でもあります。

毎日着替えて、ベッドを離れて、お茶を飲む―

―そんな小さな行動の積み重ねが、生涯にわたるリハビリの第一歩です。

これからも私たちは、一人ひとりの暮らしに寄り添いながら、新しい一歩を一緒に応援していきたいと考えています。