zarazara

2026.04.19

新しい片頭痛予防薬「アクイプタ(アトゲパント)」について

家事や仕事などの日常生活にも大きく影響しうる片頭痛。 

山形は四季の寒暖差などから頭痛のトリガーをきたしやすい環境でもあり

これまで当院の頭痛外来でも多くの患者様をサポートしてまいりました。


このたび、2026年4月に片頭痛の新しい予防薬である「アクイプタ錠(一般名:アトゲパント)」が待望の発売を迎えました! 今回、その特徴についてまとめます。


新しい片頭痛予防薬「アクイプタ」とは?

片頭痛の治療には、大きく分けて「痛みを抑える急性期治療薬(トリプタン製剤や一般的な鎮痛薬など)」と、「頭痛の頻度や重症度を減らすための予防薬」の2種類が存在します。今回新たに登場した「アクイプタ」は、後者の「予防薬」に分類されます。

片頭痛の発作には、「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」という神経伝達物質が深く関わっていることが近年の研究で明らかになっています。ストレスや天候の変化などの引き金により、CGRPが脳内の三叉神経から過剰に放出されると、周囲の血管が急激に拡張し、炎症を引き起こすことで、あの強烈なズキズキとした痛みが発生します。アクイプタは、このCGRPが結合する受容体をあらかじめブロックすることで、痛みの連鎖を元から断ち切る「CGRP受容体拮抗薬(ゲパント系薬)」と呼ばれる新しいクラスのお薬です。1日1回、毎日内服することで、片頭痛の発作が起こるのを根本から予防します。


これまでの片頭痛治療薬との「違い」

改めてアクイプタはこれまでの片頭痛治療薬と何が違うのでしょうか。大きく3つのポイントに分けて解説します。


1.従来の飲み薬(従来型予防薬)との違い

これまで片頭痛の予防薬としては、抗てんかん薬(バルプロ酸など)、降圧薬(プロプラノロールなど)、抗うつ薬(アミトリプチリンなど)などが広く使われてきました。これらは予防効果は高いとされる一方で

患者さんによって効果の差が大きかったり、強い眠気や体重増加、めまいなどの副作用で継続が難しい患者様も少なくありませんでした。

一方、アクイプタは「片頭痛の病態メカニズムそのもの(CGRP)」をピンポイントでターゲットにして開発された特異的なお薬です。そのため、従来の予防薬で十分な効果を実感できなかった方にも、高い有効性が期待できます。


2.CGRP関連の「注射薬」との違い

2021年以降、CGRPをターゲットにした画期的な予防薬(エムガルティ、アジョビ、アイモビーグといった抗体製剤)が日本でも登場し、片頭痛治療は劇的なパラダイムシフトを迎えました。

しかし、これらはすべて「皮下注射薬」でした。注射薬は月に1回(または3ヶ月に1回)の通院で済むというメリットがある反面、「注射の痛みが怖い」「針に対する恐怖心がある」「自分のタイミングで服用を中止しにくい(一度注射すると体内に長期間残るため)」といったハードルがありました。

アクイプタ最大の革新性は、「CGRPの働きを抑える優れた効果を、毎日の『飲み薬』で実現した」という点にあります。注射に抵抗があった患者様にとっても、手軽に水で飲めるアクイプタは、非常に導入しやすい新しい選択肢となります。

また、万が一お薬が体に合わなかった場合でも、服用をやめれば比較的早く体から成分が抜けるという安心感もあります。さらに、アクイプタは10mg、30mg、60mgと用量が分かれており、患者様の状態や副作用の有無に合わせて細かく量を調整できるのも飲み薬ならではの強みです。


3.ナルティーク錠との違い

昨年末に先行して発売されたナルティーク錠も、同じ「ゲパント系」の最新のお薬ですが、それぞれで個性が

異なります。

・ナルティーク: 「痛い時に飲む(頓服)」ことも、「1日おきに飲んで予防する」こともできる二刀流のお薬です。

・アクイプタ: 「予防専用」のお薬です。毎日1回きちんと飲むことで、脳を片頭痛が起きにくい状態へとコントロールします。また、10mg・30mg・60mgと用量が分かれているため、患者様の体質や頭痛の頻度に合わせて細かく効き目を調整できるという独自の強みがあります。


様々な研究結果

・効果の発現が早い

慢性片頭痛患者などを対象とした研究でアクイプタは「服用1週目」、さらに細かい解析では「服用初日」から片頭痛の発現割合を減少させたことが報告されています。飲み始めてすぐに効果の兆しを感じられるのは、患者様にとって大きな安心に繋がります(もちろん個人差はあります)

・あらゆる頻度の片頭痛に有効

月に数回発作が起こる「反復性片頭痛」だけでなく、月に15日以上も頭痛が続く重症な「慢性片頭痛」に対しても、月間の頭痛日数を劇的に減少させるというデータが示されています。

・ 生活の質(QOL)の改善

頭痛の日数が減ることで、仕事のパフォーマンス低下が改善され、「いつ頭痛が来るか分からない」という予期不安からも解放されます。休日の家族との時間や趣味を心から楽しめるようになるなど、QOL(生活の質)の向上も示されました。


新しい選択肢

片頭痛は決して「ただの頭痛」「我慢すべきもの」ではありません。専門的な治療を行うことで、生活の質を変えることができる疾患です。頭痛外来を受診される患者様の中でも「頭痛が治るとは思わなかった」という声を多くいただくことがあります。


これまで以下のようなお悩みを抱えていた方には、新しい予防治療が有効かもしれません

・毎月何度も片頭痛に襲われ、市販の痛み止めを手放せない

・従来の予防薬を試したが、効果がなかった・副作用でやめてしまった

・新しい治療に興味はあるが、「注射」にはどうしても抵抗がある

・頭痛のせいで、仕事や学校、家事を休むことが多い

アクイプタは、あなたの脳を「片頭痛が起きにくい状態」へと変えていくお薬です。ご自宅で継続できる「飲み薬」は、ご自身の生活リズムに無理なく組み込める大きなメリットがあります。


しかしながら同時にこれらのCGRP関連製剤は「費用面負担(3割負担で1.2~1.5万円程度)」という

注意点もあります。

そのため当院頭痛外来ではそれぞれの患者さんの症状や環境に応じて、適切な治療プランを一緒に設計してまいります。

お悩みの方はお気軽にご相談ください。