2025.01.22
痛みって何(part2)
さて、前回痛みの概要について説明しましたが
ここからは少し難しい話に突入してみます。
痛みを持つ人々は、しばしば「痛みが永遠に続くのではないか?」と過度に不安を感じることがあります。このような思考過程を破局的思考と呼びます。破局的思考は、痛みをさらに悪化させる原因となります。また、痛みを避けようとする恐怖回避行動(例えば、動かないようにする)が続くと、筋肉が弱り、さらに痛みを感じやすくなります。
この悪循環の始まりは、痛みの破局的思考であると言われていますが、これを作り出すのは、私たち医療者側である場合も多いようです。そこには、ちょっとした説明不足から始まっている場合もあるので自戒の念を込めてここで発信します。
例えば、膝や腰が痛いので医者に行ったとします。そこで、「変形しています。変形は治らないです。」という旨を伝えられたとします。どう感じますか?
多くの方は「痛みは治らない」と認識するでしょう。ですが、この医療者は痛みについては特に話していないのです。実は、画像所見から痛みの有無を判断することはできないことが証明されており、「変形≠痛み」なのです。
この時に、明らかな痛みの原因がなければ「変形していても必ず痛いというわけではありません。運動や活動をしたほうがよくなる場合も多いです。」と説明されていれば、破局的思考に陥ることを予防できたかもしれません。
万が一、先ほどの悪循環に陥っても、上図の右側の回路に路線変更させるための手段をうまく取れれば、良いわけです。
脳科学者は、脳の過疎化によって構築されたネットワークを消すことはできないが、新たなネットワークを上書きすることはできると言っています。つまり、正しく向き合うことで思考をシフトしていくという考え方です。
コロナ禍で世間の不安が極限まで増幅した後に「正しく怖がりましょう」みたいなことを言い出したのを思い出します。まさに、「情報」というのは是非を問わず破局的思考を生む原因となっている場合が非常に多いと感じます。
5. 慢性疼痛の治療法
慢性疼痛は、さまざまなアプローチで治療することができます。最も効果的なのは、薬物療法と非薬物療法を組み合わせることです。
- 薬物療法: 鎮痛薬や抗炎症薬、場合によっては抗うつ薬や抗けいれん薬が使用されます。
- 理学療法: 適度な運動やストレッチ、姿勢の改善が有効です。筋力を強化することで痛みの軽減が期待できます。
- 心理療法: 認知行動療法(CBT)などの方法を使って、痛みに対する恐怖や不安を和らげ、対処法を学ぶことができます。
- ライフスタイルの改善: 睡眠の質を改善したり、ストレス管理を行ったりすることも大切です。
これは、慢性疼痛治療ガイドラインからまとめたものです。認知行動療法と運動療法を併用することで、介入終了後も改善していく可能性が示されています。
大事なのは、「痛くても動ける」、「動いても痛みが悪化しない」ということに気付くことです。
とはいえ、本当に安静が必要な時期もあります。その判断は専門的なので、医療機関への相談をお勧めします。
6. まとめ
慢性疼痛は、ただの痛みではなく、心身に多大な影響を与える厄介な症状です。しかし、適切な治療とアプローチを組み合わせることで、痛みを軽減し、生活の質を向上させることができます。もし慢性疼痛で悩んでいるなら、まずは医師に相談し、自分に合った治療法を見つけることが大切です。痛みに対する正しい理解とケアが、改善への第一歩となります。