2023.06.05
とっても大事な目標設定
リハビリをするうえで、まず最初に大事なってくることは何でしょうか?
それを考えるために以前の記事でも紹介しました1982年の国連からのリハビリテーションとは?の一部を再掲します。
リハビリテーションとは身体的、精神的、社会的に最も適した生活水準の達成を可能とすることによって、各人が自らの人生を変革していくことを目指し、且つ時間を限定した過程である
漫然と繰り返すのではなく、最も適した生活水準を達成しるために、時間を限定した治療プログラムの一環である。と言ってます。(ミロクのスタッフは全員暗唱できるくらい大事な言葉です)
かなり飛躍した例ではありますが、高校総体は毎年●月に開催されるとわかっているので、そこに向けて高校生たちは努力します。 センター試験(今は別の呼び名みたいですが)が●月●日にあるとわかっているので受験生はそれを目標にします。
「センター試験はいつやるかわかりません。多分数年以内にやるとは思うけどそれもわかりませんが
とにかく受験勉強、体調管理頑張りましょう」という状態で、エイエイオーとなる学生さんはいないと思います。
とにかく大事なのは「期間とそれに応じた目標設定」ということになります。
もちろん発症直後の急性期や亜急性期は、とにかくよくなることという機能面優先になりますが、
回復期~生活期では、どのような目標をもってリハビリを行い、生活に汎化させていくのかという目標設定がとても大事になってきます。
私たちは、リハビリ初回介入時はこの目標設定の共有という部分だけで
1-2単位(20-40分)費やすくらい重視していきます。
脳卒中のリハビリは後遺症との長期の戦いになるため、やっとの思いで病院を退院して、いざ生活に戻るに当たり、目標を見失ってしまう方も少なくありません。
「もうよくならない」「後遺症だから仕方ない」この言葉をミロクでは極力使いません。と以前から言っていますが、医療者側がこの言葉を言ってしまう事で、目標どころか「リハビリをする意味」そのものを否定してしまうことになるからです。
ある程度機能(手足の動きや認知面など)が保たれている方であれば目標設定は容易な部分はあります。
(例:車の運転できるようになりたい、仕事でPC操作できるようになりたいetc)
ですが、重度後遺症によって右手がほとんど動かないという方のような場合、どこに目標を持っていくかがとても肝要になってきます。
むしろ目標がないからリラクゼーション中心に長期間通院しているという方も一定数いらっしゃるかと思います。
こういった事からも
ミロクではリハビリ適応の患者さんには、初回診察時に
医師と担当セラピストが、共同で患者さんの全身状態やこれまでの治療経過を把握共有したうえで、
様々な方法で目標設定をさせていただきます。
これらは昔から知られているアナログでありながら基本となる目標概念で
5W1H、とSMARTという指標です。 SMARTはより根拠に基づいた指標となっています。
先ほどの重度右手麻痺の方を例にしてみますと、
(WHO)本人が(WHY)右手を上手に使えるようになるために(WHERE)カフェで(WHEN)1か月以内で(WHAT)パソコンのブラインドタッチが(HOW)病前と同じようにできるようになる。
という目標の場合、どうでしょうか?
もちろん軽度~中等度であればミロクなら近づけることは可能ですが1か月は無理ですね。
さらに、発症から時間がたった重度麻痺の手ではやはり限界があると言わざるを得ません。
ここで我々専門職の出番になります。画像や症状などから、あらゆる角度で検討し
この方がどこまでの生活目標達成が可能かという予後予測を明確にたてます。
そのうえで本人・ご家族としっかり話し合います。
ここにはもちろん私(医師)も同席し、しっかりとお話します。
ここにはいくら時間かけてもいいと思ってます。
そのうえで、目標を変えてみます。
(WHO)本人が(WHY)右手全体で左手の補助ができるようになるために(WHERE)自宅で(WHEN)3か月以内で(WHAT)配膳さえしてもらえれば右手で茶碗を支えて(HOW)左手で自分1人でご飯を食べれるようになる。
こういった目標であれば電気刺激や磁気刺激、さらには痙縮や痛みに対する治療を並行しながら
プログラムすれば可能であると言えます。(※あくまで架空の例なので実際は症例毎に異なります)
一般の健常者から見ると、もしかしたらすごく低い目標に見えるかもしれません。
ですが、実際自分の利き手を全く使わない状態と補助に使える状態で3食ご飯を食べる事を考えてみると
こういったちょっとした変化がいかに大切かがわかると思います。
ニューロリハビリに特効薬も即効性もありません。
だからこそ、より実現性の高い成功を少しずつ積み重ねる(成功体験)が重要になります。
adocproject.comより一部抜粋改変
また最近ではこのように
iPADのアプリとして目標達成の満足度を計るアプリなども出てきています。
視覚的にも非常に簡便であり、客観的な数値として患者さんも効果を見ることができるので
リハビリに対する意欲につながります。
ミロクではこういったツールも応用しながら、
まずは明確な目標設定というものを軸に個人にあったリハビリをオーダーメードで
プログラムしていきます。
なので「せっかくリハビリしたくて来たのに話して目標決めるだけで終わった」という患者さんも
出てくるかと思いますが、それは今後の治療効果をより最大限に高めるための最も大事な基礎の時間だと
いうことで了承いただければと思います。
リハビリは時間が限定される治療だからこその目標設定。
とても大事な概念です。