zarazara

2026.09.16

アルツハイマー治療薬「レケンビ(レカネマブ」の皮下注射について

先日、アルツハイマー病の新しい治療薬「レケンビ(一般名:レカネマブ)」について、新たに「皮下注射(ペン型注射器)」タイプの製造販売が日本で承認されました。ニュースなどで耳にして、具体的に何が変わるのか気になっている方も多いのではないでしょうか。


正確には、今回の承認を受けて、今後薬の値段(薬価)が決められ、正式に「保険適用」となる予定です。

つまり、今年の年末頃には、実際の医療現場で保険を使ってこの新しい形の治療が受けられるようになる見込みです。この「皮下注射」の登場で、患者さんやご家族の生活がどう変わるのかをわかりやすくお伝えします。


そもそもレケンビとは、アルツハイマー病の原因の一つとされる、脳内にたまる「アミロイドβ(ベータ)」という異常なタンパク質を直接取り除き、病気の進行を穏やかにする新しいお薬です。ただし、進行した認知症を治すものではなく、「軽度認知障害(MCI)」や「初期のアルツハイマー病」と診断された、病気の早い段階の方が対象となります。


このレケンビは、2023年末からすでに保険適用されて治療に使われていますが、これまでは「点滴」しか投与方法がありませんでした。実は、この点滴治療には大きな負担がありました。患者さんは2週間に1回病院に通い、1回の点滴に約1時間、じっと座って腕の静脈に針を刺したまま過ごさなければなりません。診察や会計を含めると半日がかりになることも多く、ご家族が毎回仕事を休んで付き添うなど、時間的・身体的なストレスが大きな課題となっていました。


今回承認された「皮下注射」は、こうした負担を劇的に減らす画期的なものです。


最大の違いは、その「手軽さ」と「時間の短さ」です。点滴のように1時間かかることはなく、インスリン注射のようにペン型の注射器をお腹や太ももに押し当てるだけで、1本あたり約15秒で注入が終わります。週に1回、2本を続けて注射することになりますが、それでもトータルで数分で完了するため、身体的な拘束時間は大幅に短くなります。また、血管を探して針を刺す必要がないため比較的痛みが少なく、血管が細くなっている高齢の方にも優しい治療法です。


そして、患者さんやご家族にとって最も嬉しいニュースは、日本で初めて認知症薬の「在宅投与」が可能になる点です。医師の指導を受けて慣れれば、自宅で患者さんご自身、あるいはご家族が注射を打てるようになります。頻繁に病院へ足を運ぶ必要がなくなり、通院の疲れやご家族の負担が大きく軽くなるのは、本当に喜ばしいことです。


ただし、治療を受ける上で忘れてはいけない注意点もあります。投与方法が手軽になっても、薬の有効性や安全性はこれまでの点滴と同等です。脳のむくみや微小な出血といった副作用のリスクは依然として存在するため、自宅で注射を打てるようになっても、定期的に病院でMRI検査や医師の診察をしっかり受けることはこれまで通り欠かせません。


また、気になる費用面ですが、レケンビは非常に高価な薬です。しかし、保険適用されれば年齢や所得に応じた「高額療養費制度」が利用できます。これにより1ヶ月あたりの自己負担額には上限(多くの方は数万円程度)が設けられるため、青天井に費用がかかるわけではなく、安心して治療を継続できる仕組みになっています。


アルツハイマー病の治療は、長く付き合っていく必要があります。「治療のために生活を犠牲にする」のではなく、「今の生活を保ちながら治療を続ける」ことが何より大切です。今回の皮下注射の承認は、通院の負担を減らし、ご家族と一緒に自宅でリラックスして過ごせる時間を増やすという、希望をもたらしてくれます可能性があります。


今後の認知症治療の新しいパラダイムシフトになり得るのか、私も注目して動向を追っていきます。